「青白き船乗り」発売開始のようです。

 アマゾンの書籍で、「青白き船乗り」を検索すると、なんとここに本が❕
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電子版と紙版を同時に頼んで、電子版の方が早くできると思っていたので、紙版の方が先にできていてびっくり!
ただ、電子版の方が安価でそっちの方がお薦めです。そっちももうじきに出来上がりますので、しばらくお待ちください。

船での食事

 船での食事は、すべてフィリピン人のコックによる料理です。フィリピン人は、日本人と同じように基本的に米食であるとともに魚料理が好きな国民です。
そして、以前には多くの日本人船が乗船していた中で料理人として雇用された経緯から現在でも日本料理の教えを引き継いでいて朝食には味噌汁が出ます。
とは言っても、朝のおかずは毎日卵(スクランブルエッグや、ゆで卵、卵焼きの違いはある)とハムやソーセージです。
肉はチキンやポークが主で、誕生日にはパスタと骨付きチキンが定番で、毎週土曜日の船上パーティーにはポークの丸焼きや豚顔の燻製が出ます(写真)。
たまにビーフステーキも出てきますが、ほぼビーフジャーキーのような焼き加減です。フィリピン版のラーメンに似たバッチョイと言う料理や、ビーフン入り野菜炒め的なパンシットビーフンなどはとてもおいしい料理です。

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トン仮面の燻製
魚料理は、サバやニシンのほかパーティーのときにシイラのソテーが出ます。やや辛めのスープにソテーや揚げたサバなどが入った料理も出てきます(写真)。
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サバの切り身入りスープ
また、イカも好物なようで揚げたイカ料理も頻繁に出てきます。ただ、日本と違って魚の扱いがやや雑なところが玉に傷です。それは、「下ごしらえ」の差だと思われます。
日本のようにうろこをきれいに取り落として、三枚にさばくということがありません。ほとんどぶつ切りのまま揚げたり焼いたりします。
スープには一緒に煮込むということがなく、テーブルに並べる直前にスープと具を合わせて出しますので、温かいスープに冷たい具が入っているという感じです。
私は直ぐに電子レンジで全体を温めますが、フィリピン人はそのまま平気で食べています。皮ごとかみつくと、うろこが口の中で食べるのを邪魔します。
最近は皮をはいでから食べるようになりました。なので、食べカスが多く残ります。イカも隠し包丁を入れるようなことはありませんので、経験のない硬さです。
 フィリピン人はスペイン人がフィリピンを支配するまで国としての概念がなく、個々の島単位で生活していましたので、豊富に取れる魚資源にそれほどの価値を考えることなく生活していたのだと思います。日本のように内陸部の人々が骨だけを残して食べつくすような環境ではなかったので「下ごしらえ」の必要もなかったのでしょう。日本人は、そのおかげで鮮度を保つ方法やより美味しく食べる方法が備っていったのだと思います。
 フィリピン人は直接手で食べることも多いようですが、船ではフォークとスプーンを両手に持って食べます。自然、両肘を張って食べるので、ちょっと距離を置かないと腕に肘が当たってきます。
 普段日本にいて気にかけない日本の料理のレパートリーの多さと丁寧な調理に気付かされる日々です。日本で荷揚げするときに、スーパーに買い出しに行って、「ふりかけ」を買ってきます。これがフィリピン人には大好評。フィリピンの船員は誰も1回の食事に多量のご飯を食べます。平皿に大きく盛ったご飯です。コメは日本と同じ品種です。だからか、中年以上の船員は誰も腹がぽっちゃりしています。だけど、あまりご飯そのものにトッピングする発想はなかったようで、日本のふりかけは、その安い値段もあって大人気でした。個人的に10パックを買う船員もいました。

ネット環境から外れて思うこと

船が外洋に出ると数時間後にはネットのサービス圏から出てしまいインターネットは使えなくなります。会社との重要な連絡はインマルサット回線で使用できますが衛星を介したこの回線は使用料が高いため自由には使えません。ただフィリピンの船員には家族とのメールの交換が許可されています。情報は船員がとるフィリピンのネットニュースのみで新しい元号もこれで知りました。約半年間、日本に関するニュースはほぼこれだけで、日本がつくづく平和な国だと実感します。

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水島からの船上から見た瀬戸大橋



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船上から見たしまなみ海道来島海峡大橋(馬島側)

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船から見たしまなみ海道(大島側)

私はアンドロイドのスマホガラケーを使っています。ガラケーで使用していたアドレスの変更を伝えるのが億劫なのと、超汗かきな私がスマホの大きな画面をほおに付けて電話するのが気持ち悪く感じるからです。普段はスマホガラケーの使用比率は8対2くらいです。しかし、ネットのつながらない場所ではスマホよりもガラケーの方がはるかに役立つのを感じます。スマホのアプリはほとんどネットにつながってないと使えませんが、ガラケークラウドを介することなく使えます。フィリピン人とのコミュニケーションに和英辞書などのアプリが、役立ちます。また、ガラケーワンセグも今更ながら頼りになります。間もなく使っているガラケーのサービスが終了するそうで手放さなければなりませんが、「内向き」の品とはいえ、日本が誇る最高の機能が詰まったものだとつくづく思った日々でした。

月の見え方

 6月の満月をフル・ストロベリームーンと呼ぶことが何かに紹介されていましたが、月の見た目の大きさを話題にしているようです。もちろん大きく見える月は美しい。しかし、私は月の傾き、もっとわかりやすく言うと、「うさぎの餅つき」の傾きについて、船に乗っていて感動したことを書いてみます。

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この写真は、感動した月を写したものですが、これだけ見ても何なのか分かりません。写した私にもこの写真では、その時の感動は思い出せません。つまりは失敗写真です。感動したのは月の見え方が日本と違うということです
私は小学生のころから見上げる月の中の「うさぎ」がいつも耳を下向きにしていることに違和感を持っていました。
「うさぎの餅つき」に見えなくはないけれども、逆立ちしての餅つきってへんだなということです。これはもちろん、
月を見る位置や時刻によって違うでしょうから一晩中眺めていればちょうどいい具合に見ることができるのかもしれません。
しかし、子供が見る月はせいぜい19-21時ころですから、その頃の月はいつも逆立ちうさぎのイメージでした。
ところが、オーストラリア付近を航行して、20時頃に月を見ますとうさぎが耳を上にして立っているのです。
これには感激しました。こういう風に見える場所があるのだなぁと。まっすぐに立ったうさぎを見ると、それはもう「うさぎ」にしか見えません。
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月の見え方

外洋航路の貨物船に乗って

2月中旬から約半年間、長さ299.9m、幅50m、20万総トンのばら積み貨物船に乗船しています。この船は、オーストラリアから石炭や鉄鉱石を搭載して日本へ運び、
製鉄工場で荷揚げする船です。船員は、船長、機関長を含めて20名すべてフィリピン人です。みんなフレンドリーで陽気な仲間たちです。船は日本とオーストラリアとの距離、約3400海里(約6300km)を2週間ほどかけて航海しますが、岸壁の空き状態によっては、空くまで待機することがあります。オーストラリアの場合は沖合で投錨して、日本の場合は四国や房総半島沖で漂泊待機となります。船長の話では、2カ月間待機したこともあると言ってました。船員たちは、航海中も停泊中も決まった時間に仕事をしていますが、休憩時間にはバスケットボールや軽い運動、カラオケやギターなどの音楽、ビリヤードに似たゲームやトランプ、釣りなどで時間を潰しています。彼らは、停泊中もほとんど船内で過ごしています。特に日本では物価が高いことがその理由のようです。彼らは約9か月の契約で乗船しますので、この間ほとんど陸地を踏まない訳です。契約が終了すると帰国して待機となりますが、その期間は無収入とのこと。乗っている間に極力使わずに貯め込むとの考えもあるようです。長い航海で家族とも離れ離れですが、フィリピンの一般的収入に比べて格段に高収入を得る船乗りは人気の職業だそうで、外交航路の船の多くにフィリピン人の船員が乗っています。
 日本人の私でもフィリピン人とは直ぐに仲良くなれます。だけど一緒にゲームを行うほどのコミュニケーション力もないので、暇を持て余すことが多いんですが、それでも日出、日没時や星座の観測は十分楽しめました。
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日没
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雲間の光
写真は、日没、日出時のものですが、オーストラリアに近づくほど空気が乾燥してはっきりと見ることができます。日本に近づくと湿度が高まって雲や霞で水平線が見えなくなることが多いのです。
そして、写真にとることができなくて残念ですが、なんと言っても満天の星空は言葉では言い尽くせません。南に向かう時に段々と高度を上げていく南十字星や東の空に見えるさそり座、西の空の3つ星のオリオン座や冬の第三角形、北上するときに北斗七星の西に見えるふたご座(ふたご座は自分の星座ですが、今までこれがふたご座とはっきり認識することはできていませんでした。)日本にいると天の川って本当にあるの?というくらい見ることができませんが、洋上では星座盤以上の余りに多くの星が見えすぎて星座の判別が難しいほどです。流れ星も数分間で複数回見ることができることもあります。
今回、観察するにあたってSTAR WALK2というアプリを使いましたが、これはオフライン時も使える優れものでした。
 まもなく乗船期間も終了します。間もなく出港していく場所は中国なので、今度の航海で星空観測はあまり期待できません。またいつかあの星空を見てみたいものです。