船での食事

 船での食事は、すべてフィリピン人のコックによる料理です。フィリピン人は、日本人と同じように基本的に米食であるとともに魚料理が好きな国民です。
そして、以前には多くの日本人船が乗船していた中で料理人として雇用された経緯から現在でも日本料理の教えを引き継いでいて朝食には味噌汁が出ます。
とは言っても、朝のおかずは毎日卵(スクランブルエッグや、ゆで卵、卵焼きの違いはある)とハムやソーセージです。
肉はチキンやポークが主で、誕生日にはパスタと骨付きチキンが定番で、毎週土曜日の船上パーティーにはポークの丸焼きや豚顔の燻製が出ます(写真)。
たまにビーフステーキも出てきますが、ほぼビーフジャーキーのような焼き加減です。フィリピン版のラーメンに似たバッチョイと言う料理や、ビーフン入り野菜炒め的なパンシットビーフンなどはとてもおいしい料理です。

f:id:winhisa:20190728221747j:plain
トン仮面の燻製
魚料理は、サバやニシンのほかパーティーのときにシイラのソテーが出ます。やや辛めのスープにソテーや揚げたサバなどが入った料理も出てきます(写真)。
f:id:winhisa:20190728222238j:plain
サバの切り身入りスープ
また、イカも好物なようで揚げたイカ料理も頻繁に出てきます。ただ、日本と違って魚の扱いがやや雑なところが玉に傷です。それは、「下ごしらえ」の差だと思われます。
日本のようにうろこをきれいに取り落として、三枚にさばくということがありません。ほとんどぶつ切りのまま揚げたり焼いたりします。
スープには一緒に煮込むということがなく、テーブルに並べる直前にスープと具を合わせて出しますので、温かいスープに冷たい具が入っているという感じです。
私は直ぐに電子レンジで全体を温めますが、フィリピン人はそのまま平気で食べています。皮ごとかみつくと、うろこが口の中で食べるのを邪魔します。
最近は皮をはいでから食べるようになりました。なので、食べカスが多く残ります。イカも隠し包丁を入れるようなことはありませんので、経験のない硬さです。
 フィリピン人はスペイン人がフィリピンを支配するまで国としての概念がなく、個々の島単位で生活していましたので、豊富に取れる魚資源にそれほどの価値を考えることなく生活していたのだと思います。日本のように内陸部の人々が骨だけを残して食べつくすような環境ではなかったので「下ごしらえ」の必要もなかったのでしょう。日本人は、そのおかげで鮮度を保つ方法やより美味しく食べる方法が備っていったのだと思います。
 フィリピン人は直接手で食べることも多いようですが、船ではフォークとスプーンを両手に持って食べます。自然、両肘を張って食べるので、ちょっと距離を置かないと腕に肘が当たってきます。
 普段日本にいて気にかけない日本の料理のレパートリーの多さと丁寧な調理に気付かされる日々です。日本で荷揚げするときに、スーパーに買い出しに行って、「ふりかけ」を買ってきます。これがフィリピン人には大好評。フィリピンの船員は誰も1回の食事に多量のご飯を食べます。平皿に大きく盛ったご飯です。コメは日本と同じ品種です。だからか、中年以上の船員は誰も腹がぽっちゃりしています。だけど、あまりご飯そのものにトッピングする発想はなかったようで、日本のふりかけは、その安い値段もあって大人気でした。個人的に10パックを買う船員もいました。