女船乗り

 12月2日付で海上自衛隊初の女性イージス艦の艦長が誕生したと新聞が報じていました。艦長の写真付きのネットニュースが数日経過したあとでもまだ掲載されています。
女性の社会進出は当然ですが、自衛艦に乗る女性は相当の苦労があろうと思います。彼女の活躍と武運長久を祈念する次第です。女性、特に家庭を持った女性には、本人の努力と家族の理解と協力が不可欠です。
単に夫の理解を得ていても、その夫よりも長時間を他の男性とともに過ごすこと、そして(古い言葉で言えば)守るべき「家」を空けることに夫の家族(姑)がどう思うのかという問題が生じるかもしれません。もちろん、自分の子供が未成年であれば、その面倒を誰が看るのかというとこも重要です。そういう問題をクリアしてイージス艦の艦長までに至った彼女の能力と邁進力は称賛に値するものと思います。
ただ、誰もが彼女みたいに艦長までになれるとは限りません。むしろ多くの女性が途中で夢をあきらめていっていると思います。艦艇で勤務をしたいと思っている若い女性は、経験として艦艇での勤務を希望していいても生涯に亘っての仕事と考える人はむしろ少ないかもしれません。彼や夫、そして子供ができて、その考えが変わるのは仕方ないのかもしれません。そして「青白き船乗り」でも書きましたが、護衛艦などの中の女性区画のスペースが限られているので、仕事をその中心となって働く時期(いわゆる「働き盛り」)に艦艇に乗っていることができないこともその後のキャリアを閉ざす一因にもなっていたように思います。
 また、護衛艦などの艦艇は、プライバシーの問題もあります。女性区画が限られていますが、その女性同士のプライバシーはほとんどありません。ある女性自衛官が、乗艦した艦艇で、入浴の時にほかの女性自衛官のお尻が見えるのが嫌だったと言っていたのを思い出します。艦長室は、個室ですがこれもプライバシーはあってないようなものです。報告のための入室などもありますが、航海中は日出・日没の度に担当の乗員が艦長室の窓の開け閉めに来ます。夕方には艦長室の掃除と浴槽への湯張りにもやってきます。艦長を務めていた時、こんなこともありました。ある停泊中に艦長室に戻り、用を足そうとしたところ、ドアのところに工具が置いてありました。変だなと思いつつも便器に座り用を足していたところ、乗員が突然トイレのドアを開けて目があいました。
その乗員は驚いて「あっ」と声を発し、私は「ごめん。ちょっと待ってて」と言いました。彼は急いで部屋から出ていきました。その乗員は、トイレの整備担当で、私がいない隙に整備をしていたようで、途中で必要な工具を取りに行ったわずかな時間に私が戻って来たということのようでした。多分、女性の艦長は、どなたもいちいち鍵をかけており、こんなことはないと思いますが、それでも艦内のほとんどが公の場所であるとの覚悟もいるように思います。
北朝鮮の動向が気になりますが、頼りはやはりイージス艦。気苦労も多いとは思いますが、国民のために頑張っていただきたいものです。